肥満は健康損なう三大リスク 肥っても大きな健康トラブルもなく一生を終える犬や猫もいます。しかし肥満によって体調を崩したり、病気 を悪化させたりするケースは確実に増えています。病院に来院する犬の30%以上、猫の20%以上は肥り過 ぎと言われています。肥満には大きなリスクが三つあります。
①病気にかかりやすくなる。
肥満はいろいろな病気を誘発したり、すでに発症している病気を悪化させたりします。その病気による併発症も誘発し悪化させます。犬と猫の死亡原因で上位をしめるのは、がん、腎臓疾患、心臓疾患など。猫は糖尿病も多く、いずれも肥満が悪い影響を与えています。
②手術に伴うリスクを増やしてしまう。
脂肪が多いと、それが邪魔して手術がしにくくなります。麻酔薬が脂肪に吸収されて麻酔が効きにくくなり、結果として麻酔量が多くなって、麻酔からさめにくくもなります。また、脂肪から炎症を促進する物質が出て傷も治りにくくなります。
③雌の生理を乱して受胎率を下げ、難産にもなりやすくなります。
肥満は犬や猫にとっても大きな問題なのです。
生活習慣が大きく影響
適切な量を超えたエネルギーを摂取 摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが崩れると、ゆっくり肥満に向かってゆきます。ではどんな場合に摂取が増え、消費が減るのでしょうか。摂取エネルギー増加の要因ですが、犬や猫が好むペットフードは高カロリーのものが多い傾向にあります。欲しがるといって同じものばかりあたえ過ぎると適切な量を超えたエネルギーを摂取することになります。
おやつや人の食事を与え過ぎペットフードはしっかり管理したとしても、おやつや人の食事を与え過ぎれば、適切な量を超えます。例えば低カロリーなジャーキーでも10gで30キロ・カロリー。体重4kgの犬だと1日の必要量の10%にもなります。
消費エネルギー減少の要因ですが、散歩の回数・距離が減った犬や、室内飼育で外出の機会がなくなった猫などは、運動量が少なくなり、消費エネルギーが減少します。飼い主の家族が少ない場合や、1頭飼育の場合では、日常の遊びの回数も量も減ってしまいます。
去勢・避妊手術や加齢によって活動量や基礎代謝が低下した場合も消費エネルギーは減少します。
このように、肥満は生活習慣が大きく影響する問題なのです。
減量は動物病院に相談
体重管理の方法は、理想体重を維持しようとする場合と、過剰な体重を減らそうとする場合では違ってきます。人の場合は食事はそのままで運動などを増やして減量することもあります。しかし犬猫では現実的ではありません。食事の管理をしっかり行わないと、まず減量は成功しません。動物病院に相談すると、その犬や猫にあったプログラムや食事を選んでくれます。具体的には以下の通りです。
①現在の肥り具合をチェックします。体重だけでなく、体型や体格から視覚的に判断し、触って皮下脂肪の付き具合も調べます。
②目標とする体重を決めます。この体重を基に1日に与えるエネルギー量を正確に計算します。大まかな量で決めてしまうと成功しません。
③食事を決めます。エネルギー量が決まったら、ドライフードと缶詰フードでどちらが好きか、味と量のどちらを求めているかなど、好みを参考に食事を決めます。
飼い主がこれらを自分で進めることもできますが、きちんとした計算が必要なため動物病院を利用することをお勧めします。食事とプログラムが決まると動物病院で定時的に体重を測定し、問題があればその都度軌道修正して目標を達成して行きます。
家族の意識を一つに
減量を始めたけれど、なかなか成果が出ないので、いつの間にかやめてしまったとうい飼い主さんは少なくないと思います。減量を妨げている原因を知ると、きっと乗り越えられます。
まず、ペットフードの給与量を再認識しましょう。しっかり量ることができていますか?大体ではなくできるだけ正確に量るようにしましょう。
正確に量っても成果が出ない場合は、給与量を見直す必要があるかもしれません。最初に決めた量はあくまで目安です。
また、家族の中にこっそりおやつをやっている人はいませんか?家族の意識を一つにすることが大切です。
食べ物をついやってしまうという場合、「つい」の理由を知ると対策が立てられます。
①物足りなそうという理由なら、食事の量は変えず、回数を増やしましょう。
②人の食事を欲しがるなら、食事中は部屋を別にするなどの工夫をします。
③しつけのご褒美をやるなら1日に与える食事量の中からご褒美を与えておきなしょう。
食事以外にどうしてもあげたい場合はカロリーの少ない野菜をゆでて与えてください。
読売新聞 『犬・猫の肥満より』より